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Ⅱ ~貴族の裏事情~
【断罪人】になる、と宣言してから早数日。
私はあの神官――名前はアルムというらしい――の部下である元冒険者兼暗殺者のアリウムに絶賛しごかれていた。
「動きが遅いです。もっと早く」
指導が的確でみるみる内に成長しているのが実感できるの、だが……。
「あ、あのぉ……」
「……」
嫌われてるのかわからないけど休憩時間とかそういう時間に軽い世間話的なものさえできない!
寡黙なクール女性は何かと人気だと学校で男子から聞いたことがあるが、これは寡黙とかそういう領域をはるかに逸脱している。
いつもの私くらいに静か……って、なら平常運転か。
アリウムは多分私と同じくコミュ障なのだろうと勝手に決めつけ私は一人魔力の増幅に挑戦する。
異世界人にしては私の体は魔力の貯蓄限界が大きいらしく、普通ならこの世界の人にしか教えないという魔力増幅の秘儀なるものを教えてもらった。
やってみたら一回目は吐血、二回目は果てしない頭痛、三回目にしてやっと数分間だけ安定できる。
魔力操作に慣れていないせいだろうが、私の心の中にあった自信は軽くぽきりと折れてしまいそうだった。
実際、四回目をやけくそでやってなければ今もやろうとは思ってなかっただろう。
なんだかんだ平凡な自分を変えたくて諦め嫌いだったのが功を奏したのだろうか。
諦める理由が欲しくて。挑んで失敗するのが分かっていたから。それを以て自分はこれはできないと定義したくて。
四回目の挑戦をした。
――一切の魔力の乱れ無し。そのまま魔力切れ寸前になるまでの約5時間。
ついに、魔力増幅を完全に習得しきった。
それからは毎日数分だけでも最大出力で魔力増幅を続けていた。
器が大きくなれば比例して流れる量も多くなる。すると必然的に魔力の回復量も成長していく。そして体に負担がかからないように魔力の供給と放出の割合が供給過多になっていく。
それが目的だった。
どれだけ消費してもちょっと時間を置けば魔力が満タンになっている状況を生み出す。
この世界では魔力による遠隔攻撃や超高火力近接攻撃、バフ付与だったり擬似罠だったりと。
戦闘では魔力を使うことが多い。だからこそ魔力の量とその操作能力が両立することができる人間は、戦場では確実に重宝される。
国同士が仲たがいとなり戦争が勃発すればまず駆り出されるのは意外にも私のような即戦力となる職業の人間だった。
だからこそ、どんな人をも軽々と殺すためにも魔力増幅は欠かせない――らしい。
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