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寝ていたのに
気持ちよく陽だまりの中で寝ていたのに、急に落ちた
いつも寝ている気持ちの良い場所から。
私の飼い主のお父さんとお母さんが笑っている。
いった~い。というほど痛くはないけれどね。
猫だからちゃんと着地はできたわよ。
でも、っていうか何で今落ちたの?
私は寝ていて落ちた事なんてなかったのに
だか私の中に私じゃないものがいる
猫はじっと考えながら心の中を探る
なんだか誰かが私の中にいる
じっと心の声を聴く
『ごめんね。猫になりたいと思ってたらいつの間にか入ってた』
あらまぁ この家のお嬢さんだわ。それでバランス崩して落ちちゃったのね。
いくら猫になりたいって願ったって、そんなに簡単に猫になれるわけないでしょ?
人間なのにそんなこともわからないのかしら。
でも、私の中に今お嬢さんがいるってことなのね。
では猫になりたいなんて二度と思わないように。
まずはご飯を食べましょう。
お父さんとお母さんが、お腹の弱い私の為に買ってくれている療法食ってやつよ。私はもちろん、お腹の調子が悪いのは困るからどんなにまずくたって、文句を言わずにありがたく食べているわ。
『うえぇぇ。なに?このごはん。あんたいつもよくこんなの美味しそうに食べてるわね。』
だ~か~ら。美味しいとは思ってないけれど、私の身体の事考えてくれて、きっと他のごはんより高いご飯を買ってくれているんだから文句を言わないできちんと食べて元気でいるのが私の仕事なのよ。
さ、後はいつもの場所に戻ってお昼寝しましょ。
『ねぇ、また寝るの?さっきも寝ていたじゃない。』
あぁ、うるさい。だったら何で猫になりたいなんて思ったの?
『いつも自由でごろごろしているし、ご飯も好きな時間にたべているし、何より親にうるさく言われないのが羨ましかったのよ。』
あのねぇ、親がうるさく言うのはあなたが心配だからよ。私なんて赤ちゃんの時に親から離されたから、おっぱいもろくに貰っていないのよ。怒ってくれて心配してくれる親がいることをありがたく思いなさいな。人間なんだからもうちょっと考えなさい。
『なんか、猫って思ったより色々考えてるのね。』
『何も考えないでゴロゴロしていればいいのかと思っていた。』
『もう、人間に戻りたいよ。』
さぁ、どうかしら?
そううまく猫になったり戻ったりできるわけないと思うけど。
さ、寝ましょ。
「おかあさ~ん。私さ、さっきミィに入ってたんだよ。」
「何ふざけたこと言ってるの?宿題は終わったの?」
あら、抜けられたのね。お母さんと話しているわ。
「ねぇ、ミィのご飯不味いよ。あれ、何とかならないの?」
「ミィは文句言わずに食べているし、あのご飯だとおなかの調子がいいのよ。」
「ミィもそう言ってたよ。わざわざ体にいいご飯買ってくれてるから美味しくなくても食べるんだって。」
「あら、ミィは分かっているんじゃない。って、あんたは何でそんなこと急に言ってるのよ?」
「だからぁ、さっきミィの中に入ってたの。」
無理よお嬢さん。人間の大人はそんなこと信じてくれないわ。
でも、私の気持ち少しでもお母さんに伝わって良かったわ。
たまには私の中に入ってもいいわよ。そしたらまたご飯を一緒にたべましょうね。
「私、もう二度と猫になりたいなんて言わないわ。おかあさん。いつもいろいろありがとう。」
頬を赤らめて母にお礼を言った娘だった。
【了】
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