メロンクリームソーダの味

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メロンクリームソーダの味

そういえばこんなこともあった。 夏。「暑いは喫茶店だ。」を2人は合言葉にしている。レトロな可愛い喫茶店と言うよりも、大型のショッピングモールにはいっているような喫茶店に2人でよく入った。  私は暑い日はかき氷かメロンソーダを頼む。今日はメロンソーダを頼んだ。隆文もメロンソーダを頼むので2人してメロンソーダを囲む。アイスの部分が少しずつ溶けていく。しゅわしゅわと音を立てて、体に悪そうな緑色の部分と混じり合う。ストローで吸い込むと、ぴりりといったなんとも言えない刺激が、一気に口から喉の奥まで駆け抜ける。  「これ飲んだら、買い物しよう。」 いつも隆文が提案する。やることは無いし、特に飼いたいものもないけど、だいたいショッピングモールを2人でぶらつく。私はストローを咥えたまま、ウンウンと頷いた。  ふいに隆文が私の右手に手を重ねる。びっくりして手を引っこめる。 「ごめんごめん。」 隆文がおどけた顔をした。 「そろそろ買おうよ、指輪。お揃いのやつ。」  私はゴクリとクリームソーダを飲み込んだ。ああ、この人はクリームソーダの泡のようにしゅわしゅわと、つぎつぎ浮いてはメロンソーダの上に乗っているアイスクリームを踊らせる。私はさくらんぼの載ってるアイスクリーム。隆文の言葉に踊らされてばっかりだ。 「私、指輪とかお揃いでつけたことない。」 「俺もだよ。嫌じゃない?」 嫌じゃないわけないじゃないか。恥ずかしくなってメロンソーダを一気に飲み干した。
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