救われるべき者

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 多坊は振り向きもせずに答える。 「あくまで推理すけどね。例の、新生代の住人たちとか言う科学展の宣伝用トラックがいる所がこれ」  正面冗談の一番大きいスクリーンに東京都内の地図が映し出された。緑色に光る点があちこちに見える。 「筒井さん、トラックの数は12台で本当に間違いないすね?」  突然多坊がそう尋ね、筒井はあわてて書類をカバンから引っ張り出す。 「ええと、はい、そうです。トラックを運営している会社に電話で直接問い合わせもして確認しました。全部で12台です」  多坊はスクリーンを指差して皆に叫んだ。 「やっぱりそうだ! 見て、13台目がいる」  スクリーン上の緑の点は確かに13個あった。渡たちは一斉に「あっ!」と声を上げた。渡が多坊に言う。 「そのどれかにスミロドンが隠れているという事ですか?」 「木を隠すなら森の中ってね。あの立体映像の中に、そのスミロドンとかいう怪獣の本物が混じっててても、通行人は気がつかない」 「という事は、武藤さんが襲われるとしたら今夜?」  別のスクリーンにSNSの画像を映した多坊が悲鳴のような声を上げた。 「ああ、馬鹿野郎! なんでよりによってこんな日にやるんだよ」  宮下が多坊の肩越しにその左側にスクリーンを見つめる。そこには以前筒井と訪れたレインボーカラーのバスの画像と、今夜8時からバスカフェ開催という通知が載っていた。 「多坊さん、スミロドンはバスカフェを襲うと?」 「そう考えるのが自然でしょ? たく、月に2,3回しかやってなかったくせに、なんでこんな時にこんなに頻繁に開いてんだよ」 「どのトラックだか分かりますか?」 「そこまでは分からない。でも怪しいのはこれ」  多坊がスクリーンの緑の点の一つに指を突き出した。 「甲州街道を新宿の方に向かってる。今夜のバスカフェの開催場所は、新宿区役所前だ」  宮下は椅子から飛びのき、ショルダーバッグをつかんで渡りに言った。 「渡先生、私は新宿に急行します。今なら先に到着できる」

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