2人が本棚に入れています
本棚に追加
カヤは日が暮れかかった中、ひたすら走っていた。
「屋根伝いに降りるなんてやるじゃねえか!」
「……っやるしかないだろ!」
大量の人骨や、目は窪んで頬はこけ落ちた人間、それ以外にも、口に出すのも憚られるような異形達がひとまとめの球体となって、絶えず呻き声をあげている。
──そしてそれが、なぜか自分の後を追いかけてきている。
ご丁寧に玄関から出ていたら、一階にいる母に危険が及ぶかもしれない。そう考えたら、やるしかなかった。
幸い屋根は平たかったし、カヤはどちらかといえば身軽な方だ。やってみれば存外そこまで難しいことではなかった。
「痛っ……!」
「だから俺を履けって」
「そんな小さいの……履けるわけがないだろ!」
連れて行けとうるさいからとっさに抱えてきたが、ブーツのサイズはどう見ても小柄な女子用で、カヤの足は絶対入らない。
故に今、カヤは裸足で走っている。
舗装された道路とはいえ、アスファルトは硬いし、なにより小さな石ころやプルタブ、ペットボトルの蓋など、いつもは見向きもしない小さなゴミは転がっている。時折踏んでしまうそれらが、カヤの足を傷付けた。
「騙されたと思って履けって!」
「……っなんて言って! 実はほんとに騙して! 呪いの靴みたいに、履いたら脱げないとか──」
「よくわかったな!」
「捨てるぞオンボロ!!」
「びんてーじと言え」
最初のコメントを投稿しよう!