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 カヤは日が暮れかかった中、ひたすら走っていた。 「屋根伝(やねづた)いに降りるなんてやるじゃねえか!」 「……っやるしかないだろ!」  大量の人骨や、目は(くぼ)んで頬はこけ落ちた人間、それ以外にも、口に出すのも(はばか)られるような異形達がひとまとめの球体となって、絶えず(うめ)き声をあげている。  ──そしてそれが、なぜか自分の後を追いかけてきている。  ご丁寧に玄関から出ていたら、一階にいる母に危険が及ぶかもしれない。そう考えたら、やるしかなかった。  幸い屋根は平たかったし、カヤはどちらかといえば身軽な方だ。やってみれば存外そこまで難しいことではなかった。 「(いた)っ……!」 「だから俺を履けって」 「そんな小さいの……履けるわけがないだろ!」  連れて行けとうるさいからとっさに抱えてきたが、ブーツのサイズはどう見ても小柄な女子用で、カヤの足は絶対入らない。    (ゆえ)に今、カヤは裸足(はだし)で走っている。  舗装(ほそう)された道路とはいえ、アスファルトは硬いし、なにより小さな石ころやプルタブ、ペットボトルの(ふた)など、いつもは見向きもしない小さなゴミは転がっている。時折踏んでしまうそれらが、カヤの足を傷付けた。 「騙されたと思って履けって!」 「……っなんて言って! 実はほんとに騙して! 呪いの靴みたいに、履いたら脱げないとか──」 「よくわかったな!」 「捨てるぞオンボロ!!」 「びんてーじと言え」
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