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行き着いた先は廃病院だった。
「ここなら──」
誰もいないだろう、というカヤの考えは甘かったらしい。
病院の中から、嫌なほどよく見知った顔が出てきた。
ガタイのいい大木とそのくっつき虫の小柄な林の凸凹コンビ。悪ガキで有名な高校のクラスメイト2人組だ。
「あ、事故に遭ったカヤ君じゃーん」
「意気地なしがなんでここにいんのー?」
大木と林は、いつもと同じように、カヤを左右から交互にどついた。
2人の片手には自撮り棒や懐中電灯が握られていた。流行りに乗ろうとしてSNSの撮影にでも来たのかもしれない。
「来てるぞ」と、ブーツがもがいた。
言われなくとも後ろから呻き声が近づいてくるのはカヤにも聞こえている。
しかし大木と林は、ブーツの声も呻き声も一切聴こえないらしい。
反応を示さないカヤに、大木はしびれを切らしはじめた様子だった。
どうする? どうしたらいい? 逃げろと言って帰るような連中ではないことは、幼い頃から事あるごとに、行き過ぎたいじりを受けてきたカヤは十二分に知っている。
……それをたしなめていたのも、幼馴染だった。
「おい。感傷に浸ってる場合じゃねえぞ!」腕の中でブーツが暴れた。
ハッと我に返り、振り返った先には──先程よりも大きく膨れ上がったあれがいた。
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