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「場所選ミスったな。あいつ、ここに住み着いた霊達を吸収してやがるぜ」
「な、なにそれ……」
カヤが慄き、ふらりと一歩後退ると、そこには足があり──引っかかって思いっきり尻もちをついた。
そして次の瞬間、視界はチェック柄に遮られ──右頬に強い衝撃を受けたのを感じた。じくじくと広がる、その覚えのある痛みで、大木に殴られたのだと、カヤはぼんやりと悟った。
大木はカヤの胸ぐらを掴んで無理矢理立たせ、また突き飛ばし、カヤはまたもや尻もちをついた。
「さっきから何ぶつぶつ1人で喋ってんだよ?」
「邪魔なんだよ。帰れよ」
2人組は、いつものように、カヤを見下した目をしている。
カヤは頬を押さえ、腕の中へ向かって静かに問う。
「……ここで僕が帰ったら、こいつらってどうなるの──?」
ブーツは嘲笑って
「まず喰われるだろうな」ぴょんと跳ねた。
「普通なら粋のいい生者なんて見向きもしねえが──さっきまでとは違って、住み着いてた霊が取り込まれたからな。自分が住んでた場を荒らされたらムカつくだろ? 当然の報いだと、俺は思うがね」
「そっか」と、カヤはこぼした。2人組が何やらごちゃごちゃと喚いている声が、いやに遠く聞こえる。
不意にブーツが暴れた。
「来たぞ」
「──っ!!」
カヤの真横の地面が一瞬にして陥没した。
ブーツが暴れたおかげでカヤは身をよじり間一髪逃れたが……かすったのだろう。目の前にいた大木の右腕の一部は欠損していた。
大木の腕からボタボタと血が滴る。何が起きたかわからない大木は、ゆっくりと視線を腕へやり、顔を歪めた。
「うわあ──」
大木の悲鳴を遮り、カヤは声を張り上げた。
「2人共走って!」
骸骨が向かってくるのが見え、カヤは2人の背中を押して廃病院の裏へ走った。
大木も林も視えないながらも、あそこに何かがいるのはなんとなくわかるのだろう。2人は息を殺して震えていた。
「病院なら包帯か何か残ってるかもしれない。探して……くるから、ここでじっとしてて」
カヤの言葉に、2人はこくこくと頷いた。
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