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「やっぱり、お嬢はどこの世界でも優しいっスねぇ」
『世界』という単語に綾女は目を見開いた。
「それどういう意味? その『世界』ってなんのこと? お願い、何か知ってるなら教えて!!」
男は暫しぽかんと涙目の綾女を見ていたが、やがて、「ああ、なるほど」と呟いた。
「今まで過ごしていた日常と違うことが起きたんスね?」
綾女はこくこくと何度も頷いた。
「わかったっス。俺がわかる範囲のことを今から話します」
んっんっ、と男はわざとらしく咳払いをし、それらしい様子で話し始めた。
「お嬢は今、以前と違う世界線にいるんス」
「違う……世界線……?」
「パラレルワールドってやつっス。聞いたことあるでしょう? ……あ、ない感じ?」
「ない。っていうか、よくわかんない!」
まあまあ落ち着いて、と宥められ、綾女は俯いた。
「『IF』の世界ってやつっス」
「いふ?」
「『もしも』とか『かもしれない』の世界って言ったらわかりやすいっスかね?」
「なにそれ……かもしれない? 運転?」
男は、ふっと苦笑した。
「そうっスね。大雑把に言えばそうっス。『目の前に戦闘中の人が飛び降りてくるかもしれない』とか」
「どんな『かもしれない』想定してんですか……」
ふざけているのか、と綾女は顔を顰めた。しかし男は至って真面目な様子で続ける。
「そういう世界線……パラレルワールドもあったって話っス。『弱者淘汰を掲げる宗教が流行った世界線』でしたっけね。火器銃器、近接戦闘やロボット系統等を駆使して毎日殺し合いや暗殺。もう酷い有様で」
男は深くため息をつき、更に続ける。
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