「君たちが藪から坊主君か。勢いもあるし、この調子で頑張ってくれや。期待しとるで」

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「俺は畑野はロケ番組を観てる感じやと優しさに溢れよって、もっと一途で一人の子を愛してやまないタイプやと思ったんやけど、そう言うのは無い?」 「俺の方は優しく接して大事にしてるつもりやと思ってるんやけど、フラれる時は『他に好きな(ひと)が出来た』言わはるんですよ。俺の何がダメなんすかね?」「知らんわ!」 「“他に好きなひとが出来た”は、畑野がって感じやろ。本命以外にキープしとく候補やったんやないか?  売れてない芸人(やつ)でも援助してでも支えようとしてくれる女性とか居るやないか。本気やと思っとったんは畑野だけで、彼女(むこう)は違ったんやないか?」  そう言われた畑野は動揺したようで、これまで信じていた常識が(くつが)えされたような顔をしていた。収録(テレビ)だと言う事を忘れた畑野は丁稚奉公芸人として画面外に待機している“ひとしこの実”この実に対してこう叫んだ。 「この実ちゃんもそうなのッ!?」 「この実って誰や?!」  テレビカメラの一台が手を上げたひとしこの実に向いた。 「僕ら丁稚奉公芸人として藪から坊主さんから呼ばれてやって来ましたひとしこの実です」  さけますさんとは初対面になるので二人は丁寧に頭を下げた。 「この実って言うのはそこのべっぴんさん?」 「はい。ひとしこの実、この実です。宜しくお願いします」「をう、初めまして生丸屋さけますや」  放送上ではカットされたがそう言うやり取りもあった。さけますさんも良い大人だ。礼儀は忘れない。
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