「君たちが藪から坊主君か。勢いもあるし、この調子で頑張ってくれや。期待しとるで」

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「俺は小説家として才能無いんかなあ……」  現実を知ってしまった事でさすがのバカでも夢から醒めてしまったようだった。引いては藪から坊主の為でもあるが、畑野の今後に賭けていただけにショックは計り知れない。 「そんなに落ち込む事はないよ。全否定するつもりもないし、趣味として続けるならそんなに悲観する事はないよ。それに、畑野の書いた作品(もの)を読んだ訳じゃないから」  佐藤さんはせめてものフォローをする。ただ小説家になるなら、そう言った現実を知らないでちょっと絵の上手い人が「漫画家になる」と言わない為の予防線のような気がした。 「僕が思うに小説とか物書きって人柄が(にじ)み出るようなものやと思うんですよ。最近の藪から坊主の出演するロケ番組やと畑野は優しい性格な感じがするんよ。そう言うのを活かせる作品やったら、恋愛よりももっとええもん書ける気がするんやけどなあ」  砂山兄さんは僕らの出演する番組をチェックしてくれているようだ。師弟関係は薄くなってしまったが切れていない事を再確認するしかなかった。 「砂山兄さんがそう言うてくれるんやったら…まだ続けてみよう思います」 「僕は無責任にやれ、とかそういうの言えへんけど続けるのは悪く思わへんよ。“お笑い”の本業を頑張れば見えてくるもんもあるから、先ずはそっちやで」「ありがとうございます」  畑野の言葉の後にカットがかかり一旦休憩となった。本日三回目の休憩で収録時間は五時間近くになっていた。
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