「君たちが藪から坊主君か。勢いもあるし、この調子で頑張ってくれや。期待しとるで」

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「僕らの原点としている劇場や舞台のようなネタ見せでは、お笑いが本領やと思って今もネタ作ってるんですけど(客からの)反応がイマイチなんですわ。  一回だけ声ドア芸に頼らない昔のネタをリメイクして披露した事もあるんですけど、やっぱイマイチで『それが見たかったんじゃねーよ』的な空気になってしもたんです」  僕もお笑いが好きで芸人になり、一時は東京進出も果たしている。それなのにお笑い以外の部分でしか評価されていないのはやりたい事の乖離がある。同人作家さんが商業雑誌に行った時に同じ心境になり“筆を折る”ような話も休憩中に畑野が聞いてしまったそうである。 「僕ら藪から坊主はお笑いとして声ドア芸だけに頼るのもどうかと思ってます」 「木場君、俺はもったいないと思うよ」と、いの一番で言ってくれたのは砂山兄さんだった。続けてこうも言ってくれた。 「やっぱさ、お笑いで注目される人って言うのはどっか旬のネタがある人なんや。注目されているからこそ、スペシャリストとして極めれば他にマネ出来ん芸になって半年に一回でもテレビに呼ばれたり、営業で稼げるようになるんや。  木場君がそう言うのを言うんは、テレビに呼ばれへんようになるちょい前に気付いて『声ドア芸だけじゃないで、お笑いも出来るんやでっ!』ってすればええんや。まだ先を心配するんは早いんちゃうか?」  砂山兄さんでも家族を養うには必要最低限の収入を得ている。相方の城地兄さんに比べれば知名度こそ低くなっているが、生活は出来ている。
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