19人が本棚に入れています
本棚に追加
44
私は快斗と友達になりたかった。
携帯で猛アピールして連絡先を教えてもらった。
時間があると言うので近くの喫茶店に連れて行った。
席に座ってすぐLINEでやり取りを始める。
『選んで。私が注文する』
『名前教えて。年齢も。あと、血液型と、趣味と』
『矢島快斗。22歳。O型。読書』
快斗は笑いながらメニューのコーヒーを指差した。
『変わってるね』
『何が?』
『障がい者と積極的に関わろうとする人、なかなかいないから』
『いや、だってかっこよかったから』
快斗の顔を見たら時が止まっていた。
私が笑うと
『うわー』
って返信してきた。
『助けてくれたから』
『側にいてくれたから』
『タオルぐちゃぐちゃにしちゃったから』
『俺も、助けてもらった。ありがとう』
『タオルはいいよ。あげる』
『汚いから』
快斗の顔をみたら笑ってた。
もう泣きそうじゃない普通の笑顔だった。
『快斗、手話したりするの?』
『するよ』
『じゃあ私、手話覚える‼︎』
『携帯で話せるよ』
『手話なら顔見て話せるじゃん』
「ね?」
私は快斗の顔を見ながら首を傾けた。
快斗がまた泣きそうな顔に戻っていた。
『迷惑なら、携帯で話すね』
『違う。嬉しいんだよ』
私は顔をあげられなかった。
顔の前に束になった紙ナプキンが差し出された。
『タオル、もうないから』
笑いながら受け取って涙も鼻水も拭き取った。
最初のコメントを投稿しよう!