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 持ち上げ続けられるのに疲れてエゴサをした。批判や誹謗中傷を見ればバランスが取れるんじゃないかと、安易な考えだった。 『手話とか偽善丸出し』 『所詮ご当地アイドル。お遊戯会』 『ギターもダンスも別に人並み』 『何目指してんのかわからないグループ』 『洸と千早はBL』  気持ちの悪いイラストにされて吐き気がする。  夜通しエゴサをしていた。  締め切ったカーテンの隙間から日が差している。 「学校…」  頭が真っ白になっていく。  遠くで母さんの声が聞こえた気がした。  目を開けたらぼんやり点滴のパックが見えた。 「病院くさい…」  学校…仕事以外で休んだの初めてかも…。  夜通しのエゴサで脱水症状と睡眠不足。  後は、つもりに積もった過労と精神的なストレス。  惺から連絡が回ってメンバー全員が来てくれた。 「終わろう」  みんな優しくて、Five-fifthsになった時と何も変わっていなかった。  距離を作ってたのは俺自身だったんだ…。 「ごめん。俺、リーダーなのに。ちゃんとやれなくてごめ…」  情けなくて、悔しくて、寂しくて。  今までで一番、心がひとつになった気がした。  俺たちの解散の申し出を事務所はあっさりと受け入れスケジュールを変更した。 『Five-fifthsは2周年を迎える5月5日のライブを最後に解散する事となりました。それに伴い、予定していた東京公演は中止となります。』  ライブまであと半月。  満身創痍(まんしんそうい)だとしても言い訳はできない。  この2年、応援してくれたみんなに誠意を尽くさなくては…。  どうにか立て直さないと…。  気づくと眠ってしまう。  頭が上手く働かない。  頑張ろうとすると力が入らない。 「頑張れ、俺。頼むよ…」
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