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快斗と出会ってから毎日指文字の練習を始めた。似た様なのが多くて混乱しながらも、楽しかった。
一音一音確かめる様に話す私の手話を頷きながら聞いてくれた。
"き""ょ""う"
"今日"
「ああ」
指でオッケーを作る。
そうやって少しずつできる手話が増えていった。
そうやって過ごしていく毎日の中で、快斗を好きになっていった。
キスも、その先も、快斗が初めてだった。
2人きりでいると静かで温かくて幸せだった。
ただ優しい笑顔があるだけで良かった。
ただ一緒にいられればそれで良かった。
その年の冬、快斗からもう会わないと言われた。
"何で?"
"就職が決まった。仕事に集中したい"
"早くてよくわからない"
"他に好きな人ができた"
"好きな人?"
"………………"
"わからない。わからない‼︎何で泣くの?何て言ったの?"
それを最後に快斗との連絡が途絶えた。
ただ辛くて毎日泣いていた。
私が快斗を傷つける様な事をしたのかな?
最後にみた顔が頭からずっと離れなくて、快斗の笑顔が思い出せなくて。
「どうして?どうして?どうして…」
あれからもうすぐ3年。
忘れた事なんてなかった。
恨んだり憎んだりしてた訳じゃない。
ただ、幸せでいて欲しいと願ってた。
笑顔でいて欲しいと願ってた。
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