19人が本棚に入れています
本棚に追加
8
翌日、昼まで学校に行った。
昼過ぎからダンスのレッスンがあって、その後タウン誌の取材を受けた。
それからボイトレを受けて、最後に新曲の割り振りについてミーティング。
帰宅したのは22時。
『電話、遅いかな?』
『大丈夫だよ』
少し緊張しながらビデオ通話のボタンを押した。
『お疲れー』
画面の向こうの藍那さんが手を振っていた。
「思ったより遅くなっちゃった」
"大丈夫だよ"
「あ、それわかるよ。大丈夫」
『そう‼︎』
"今日""疲れた"
『えー?できてるよ‼︎私いらなくない?意味ある?』
「あるよ‼︎」
『…あ、そう?はははッ』
"大きい""声""ごめん"
"大丈夫"
藍那さんの優しい笑顔に癒されていた。
"今日、どんな事したの?"
「今日…何した?えっと…」
"学校"
「後は…ダンス。ダンスってどうやる?」
"ダンス"
「あー。へぇー…」
"他には?"
「取材…」
『え?取材⁈…どうやるんだろう?』
「わかんないのもあるんだね」
『あるよー‼︎取材なんて手話、一生使わないし』
"し""ゆ""さ"
「んー…どうやるん?」
『ゆの字はよう音にするんだよ、小さい字。手前に引く』
"ゅ"
『そうそう』
"し""ゅ"
『そうそう』
"ざ"
『濁音は今みたいに右に動かすよ』
「あー…」
『取材と、他には何したの?』
「ボイトレとミーティング」
『そんな手話やった事ないよー』
藍那さんが笑った。
「藍那さんは、何してた?」
『…今日は、学校行ったくらいで特に何も』
「大学生?」
『ううん。専門…あ、明日』
「ん?」
『昨日の…レンと会うよ』
「え?何で?」
『…何で?予定が合ったからご飯行こっかーって』
「へぇ…」
『洸くんは明日も学校と仕事?』
「そうだよ」
"頑張って"
「口で言ってよ」
『…頑張ってね‼︎』
「次、いつ会える?」
『えー…と、それは洸くんの予定次第かな?』
「俺…」
『…土曜日、イベントあるよね?行こうかな?歌ってるとこ生で観てみたいし』
「え⁈マジで⁈静岡来るの?」
『…うん』
「えーヤバ。やったー‼︎」
『会えたらジャケット返せる様に、持って行くね』
「…わかった」
最初のコメントを投稿しよう!