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 翌日、昼まで学校に行った。  昼過ぎからダンスのレッスンがあって、その後タウン誌の取材を受けた。  それからボイトレを受けて、最後に新曲の割り振りについてミーティング。  帰宅したのは22時。 『電話、遅いかな?』 『大丈夫だよ』  少し緊張しながらビデオ通話のボタンを押した。 『お疲れー』  画面の向こうの藍那さんが手を振っていた。 「思ったより遅くなっちゃった」  "大丈夫だよ" 「あ、それわかるよ。大丈夫」 『そう‼︎』  "今日""疲れた" 『えー?できてるよ‼︎私いらなくない?意味ある?』 「あるよ‼︎」 『…あ、そう?はははッ』  "大きい""声""ごめん"  "大丈夫"  藍那さんの優しい笑顔に癒されていた。  "今日、どんな事したの?" 「今日…何した?えっと…」  "学校" 「後は…ダンス。ダンスってどうやる?」  "ダンス" 「あー。へぇー…」  "他には?" 「取材…」 『え?取材⁈…どうやるんだろう?』 「わかんないのもあるんだね」 『あるよー‼︎取材なんて手話、一生使わないし』  "し""ゆ""さ" 「んー…どうやるん?」 『ゆの字はよう音にするんだよ、小さい字。手前に引く』  "ゅ" 『そうそう』  "し""ゅ" 『そうそう』  "ざ" 『濁音は今みたいに右に動かすよ』 「あー…」 『取材と、他には何したの?』 「ボイトレとミーティング」 『そんな手話やった事ないよー』  藍那さんが笑った。 「藍那さんは、何してた?」 『…今日は、学校行ったくらいで特に何も』 「大学生?」 『ううん。専門…あ、明日』 「ん?」 『昨日の…レンと会うよ』 「え?何で?」 『…何で?予定が合ったからご飯行こっかーって』 「へぇ…」 『洸くんは明日も学校と仕事?』 「そうだよ」  "頑張って" 「口で言ってよ」 『…頑張ってね‼︎』 「次、いつ会える?」 『えー…と、それは洸くんの予定次第かな?』 「俺…」 『…土曜日、イベントあるよね?行こうかな?歌ってるとこ生で観てみたいし』 「え⁈マジで⁈静岡来るの?」 『…うん』 「えーヤバ。やったー‼︎」 『会えたらジャケット返せる様に、持って行くね』 「…わかった」
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