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ヴーヴーヴー  静かな空間に着信音が鳴り響く。 「すみません」  彼はスマホを取り出し、席を立った。私は彼が店の外に出るのを見て息を吐いた。まるで首を絞められてるかのように息苦しかったが、やっと空気を吸える。私は落ち着いてテーズケーキに臨んだ。  程よい甘さにチーズの風味とレモンの酸味が感じられて美味しい。紅茶との相性も良さそうだ。私は満足気に笑みを浮かべた。  カランとすぐに彼が戻ってきた音がした。険しい顔をしている。緊張が戻ってくる。 「急用ができたので帰ります」 「え、はい」 彼はそれだけを言うと伝票を持った。 「私も払います」 「結構です」 バッグを持って立ち上がった私を手で制する。 「食事中に立ち上がらないで下さい」 「すみません」 淡々とした口調で注意を受け、頭を下げた私を見て、彼は眼力を強めた。無言の圧力を感じ、椅子に座る。 「今日はありがとうございます」 たどたどしい愛想笑いを浮かべて言うと、微かに彼の口元が緩んだ気がした。その微笑みは意外と優しく、怖がってばかりいた自分を責める。  彼がカフェから出ると店員がコーヒーカップを引きにテーブルに近づいた。 「大丈夫でした?」 彼女は心配そうな目で私の方を窺った。不思議に思い、見つめる。 「あの人って危険な人ですよね。私、夜のお店によく行くんですけど、そこでボスみたいに怖がられてるんですよ。」 だから何かあったら警察に行ったほうがいいですよ。そう小声でアバウトな忠告をされた。こんな可愛い人が夜遊びするのか。 「夜遊びするんですねぇ」 思ったことを声に出してしまったが、彼女は気にした風はなかった。 「見えないですよね。よく言われます」 従姉がお見合いを嫌がった本当の理由が何となく分かった。彼女は彼が危険な人物だいう噂が流れていたのでは無いと思うだろうか。しかし最後に優しく笑った彼がそう怖い人だとは思えなかった。散々怖がっていたのは私だが、彼は見た目と話し方で損しているだけかもしれない。 「お気遣い頂きありがとうございます。でも、大丈夫です」 「そうですか?何かあったら相談してくださいね」 彼女は初めて会った私にも優しくそう言った。  
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