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先ほどよりも熱に浮かされた声が鼓膜に注ぎ込まれた。返事をする前に、大きな手のひらが腰から前に伸ばされた。骨張った指はいともたやすく拓真の雄へ辿り着き、兆した丘をゆるりと一撫でする。
頭の先まで痺れるような陶酔が襲う。もっと欲しい。下へ降ろしたままの腕をショウの手に重ねようとしたときだった。
「やば、きも……」
すぐ近くで、若い女性の声がした。その瞬間、心臓が止まった。ショウの手も拓真の股間に這わせたまま動きが止まる。
もしかして男同士で痴漢行為をしていることがバレたのか。冷や水を浴びせられたかのように一気に血の気が引いていく。先ほどまでのとろけるような官能は吹き飛び、脳が覚醒していく。
反射的に、ショウの手首をつかんで頭だけ振り向いた。
「あのっ」
無抵抗のショウと目が合う。無造作にセットされた黒髪から覗く、少し垂れた人懐っこい犬のような瞳がめいっぱい開かれる。
「え……?」
拓真もショウに負けじと、溢れんばかりに目を開いた。
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