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「これとこれと、あとこれも」
リュックにお出かけグッズを詰め込んでいく。
ハンカチ、着替え、植物図鑑、魔法陣図鑑、もしもの時のために薬品も忘れない。あとおやつのお菓子もだ。テーブルの焼き菓子を袋に詰めてリュックに入れた。これで完璧だ。
クロードはリュックを背負い、扉を少し開けて外を確認する。
誰もいない。行くなら今しかない。
でも。
「ブレイラ……」
小さく呟いてぎゅっと目を閉じる。
思い出すのは昨日のブレイラ。クロードの耳に顔を寄せ、内緒話をするように乗馬に誘ってくれた。
びっくりしたけれどクロードはとても嬉しかったのだ。
だって父上もにーさま達もお仕事の話しをしていて、クロードは静かに話しを聞いているだけだった。まるで仲間外れ。そんな時にブレイラが「クロード」と優しく呼んでくれたのだ。そうするとクロードは寂しくなくなって、胸がいっぱいになって、とっても暖かくなる。
ブレイラはいつもそう。
ブレイラはいつも側にいてくれて、手を繋いでくれて、たくさん話しかけてくれて、たくさん抱っこしてくれて、クロードを寂しい気持ちにしないのだ。
だから乗馬に誘ってくれて嬉しかった。嬉しかったけど、でも。
「っ、……ブレイラ、ごめんなさいっ……!」
クロードはダッと駆け出した。
廊下を駆け抜けて城外へ。
途中で訓練場の倉庫に忍び込むと訓練用の剣を手に取った。背中に括りつけて完璧だ。
本当は自由に武器を出現させるようになりたいけれど、クロードの魔力ではまだ出来なかった。
こうしてクロードは背中にお出かけリュックと剣を括りつけてにーさま達を探す。士官に訊ねるとどうやら二人は転移魔法陣がある広場に向かったようだった。きっとそこから冥界へ行くのだ。急げばまだ間に合う。
クロードは息を切らせながら全力で走った。
広場が見えてくるとそこに見慣れた姿。イスラとゼロスだ。二人は今にも転移魔法陣を発動しようとしている。
「まってください! にーさまたち、まって~~!」
クロードが走りながら呼びがけた。
するとイスラとゼロスが走ってくるクロードに驚いた顔をする。
クロードはひと安心。良かった、間に合ったのだ。
到着して呼吸を整えるクロード。
そんなクロードをゼロスがしゃがんで覗き込む。
「クロード、どうしたの?」
「わたしもいっしょにいきますっ」
「ええっ……」
ゼロスが驚きで目を丸めた。
腕を組んで見ていたイスラも眉間に皺を刻む。
しかしクロードは二人のにーさまに一生懸命お願いする。
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