Episode1・クロードと二人のにーさま

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「わたしもいっしょにつれてってください! おねがいします!」 「クロード……」  必死なクロードにゼロスは困ったように頭をかく。  ゼロスとしては連れていってあげたい気もするけれど……、どう思う? とイスラを振り返る。 「兄上、どうしよ。クロードこんなこと言ってる」 「冗談だろ」 「ハハッ、冗談だよね。クロード、残念だけど今日はお留守番」 「……いやですっ。いつもならつれていってくれるじゃないですか」 「その時は父上やブレイラも一緒だし、護衛もたくさんつくでしょ?」  ゼロスが説得したがクロードは拗ねてしまう。  でも今にも泣きだしそうな顔をしていて、ゼロスは苦笑してクロードの頬をツンツンした。 「そんな顔しないでよ」 「つれてってください」 「うーん、困ったなあ。兄上、どうする?」 「駄目だ。足手纏いだ」  イスラがきっぱり反対した。  創世期の冥界は気軽に遊びに行くような場所ではないのだ。  クロードもそんなことよく分かっている。分かっているけど、にーさま達と一緒に行きたいのだ。  クロードは少し恨みがましげな顔でイスラを見上げる。そして。 「……ブレイラはつれてったのに」  ぼそっと小声で言い返した。  クロードはイスラと目を合わせないようにしたまま続ける。 「ちちうえもごえいもいなかったのに、ブレイラが『おねがいします』っていったらイスラにーさまは『いいよ』って……」 「お前……」  イスラがじろりっと見下ろします。  イスラの眼力にクロードは怯みながらも勇気を振り絞る。 「ブレイラが『めいわくをかけてごめんなさい』っていったら、イスラにーさまは『おれがいるからだいじょうぶ』ってかっこよくいってた」 「…………。……見てたのか」 「みてた。めいかいはあぶないのに、ブレイラにはいいよって」 「………………」  沈黙するイスラ。  しゃがんで肩を震わせているゼロス。両手で口を抑えて必死に笑うのを耐えている。  五歳のクロードはブレイラと一緒にいる時間が長いのでいろいろ目撃するのだ。 「てんいまほうじんのまえで、イスラにーさまはニコニコしてブレイラとてをつないで」 「ああもう分かったっ。分かったからちょっと黙れっ」  イスラは頭を抱えて遮った。  人間の王である勇者イスラは歴代最強と名高い勇者で、勇敢さと強さと聡明さを兼ね備えた完全無欠のパーフェクト勇者である。……が、ブレイラには弱かった。 「兄上がニコニコっ……。プッ、アハハハハハハッ!!」  ゼロスが耐え切れずにとうとう噴き出した。  ゼロスも負けず劣らずのブレイラ大好きなのだが、今はいつも厳しい兄上のことなので笑ってしまう。 「ゼロス、なにが可笑しい」 「アハハハハッ! ご、ごめんなさいっ。でも、うぅっ」  ぎろりっと睨まれてゼロスは慌てて口を塞ぐ。  これ以上笑うと後でとんでもないことになりそうだ。必死で我慢だ。  こうしてゼロスを黙らせたイスラはまたクロードを見下ろした。
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