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「遊びに行くんじゃないぞ?」
「わかってますっ」
クロードが背筋をピンッと伸ばして答えた。
イスラはクロードを見下ろす。背中にお出掛けリュックを背負い、訓練用の剣を括りつけている。実戦未経験のクロードが剣を握ったところで役に立つとは思えないが、それでも本人なりに覚悟して追いかけてきたのだろう。
イスラは大きなため息をついた。
クロードは幼すぎるのだ。
それは五歳だからではない。そもそも自分もゼロスも五歳の頃には剣を握って戦っていた。絶体絶命の危機も実戦も何度も乗り越えてきた。
そんな自分たちに比べてクロードはあまりに未熟だ。普通の五歳児に比べれば体力も身体能力も優秀なものだが、それはあくまで普通の五歳児と比べればという話しなのである。
だが、だからといってこのまま城の奥で剣の訓練をしていても何も変わらない。それを思うと冥界へ連れていくのは悪いことではないのだが。
「兄上、どうする? 僕は連れてってもいいと思うんだけど、ブレイラは心配するよね~……」
「…………」
無言のまま悩むイスラ。
そう、それである。まさにそれが悩む理由だ。
ブレイラは未熟なクロードをとても心配している。まだ覚醒していないことをクロードが悩んでいると心を痛め、少しでも慰めようと静かに寄り添っている。
そんなブレイラが、もしクロードが冥界の調査に同行したと知ったらと思うと……。
…………悩ましい。
イスラはブレイラの憂える顔を見たくないのだ。
しかし。
「にーさま……」
心細そうに自分を見上げるクロード。
赤ちゃんの頃からハイハイで自分やゼロスの後について来たのを覚えている。お出かけを察知すると、自分も連れて行けとばかりにリュックやおんぶ紐を引きずってくるのだ。
今もリュックを背負って一緒に連れて行けとせがんでいる。おんぶ紐が剣に変わっただけだが、……仕方ない。
ピーーーッ! イスラが指笛を鳴らした。
すると召喚魔法陣が出現して一羽の鷲が飛び出してくる。
鷲は旋回してイスラの肩に降り立った。
「ブレイラに伝えてくれ、心配はいらないと」
「ピイイイィィ!」
鷲はひと鳴きすると翼を広げ、魔王の居城がある方角に飛んでいった。
クロードもそれを見送りながらみるみる顔が明るくなっていく。
「にーさま! さっきのっ、わたしもいっしょにいっていいってことですか!?」
「調査で行くんだ。自分の身は自分で守れ、いいな」
「はいッ!」
クロードはお利口な返事をした。
こうして一緒に行く許可が下りてクロードは嬉しそうにイスラとゼロスの周りをうろちょろだ。クロードだけ子ども扱いされるが仲良し兄弟なのである。
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