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「お久しぶりですね。いつもイスラをありがとうございます」
挨拶をして頭を撫でてあげます。
そうすると嬉しそうに擦り寄ってきてとても愛らしい。
「ハウスト、この子はなんて言ってるんですか?」
鷲を撫でながらハウストに聞きました。
ずるいですよね、神格の王は使役された召喚獣と意思疎通できるというのです。なんて羨ましい。
そんな私の隠し切れない羨望にハウストは苦笑してイスラの鷲から聞き取ってくれます。でも、表情がしだいに変わっていく。眉間にムムッと皺を刻んで、少し呆れたようなそんな表情。
「どうしました? イスラはなんて?」
私が聞くとハウストが答えに困りつつも私を見つめます。
そして。
「……どうやら俺たちはすっぽかされたようだぞ」
「え、すっぽかされた……?」
すっぽかされた。
すっぽかされた。
ショックのあまり思考が停止してしまう。
でもハウストは無情にも私に繰り返す。
「ああ、すっぽかされたんだ。ここにクロードはこない」
「クロードは……こない?」
「そう、こないんだ。こないんだぞ、ブレイラ」
ハウストが重大なことを伝えるように言いました。
言い聞かされて、私は、わたしはっ……。
「め、冥界に行ったんですね! そんなのダメに決まってるじゃないですか!」
薄々そんな気はしていましたが、だからといって許せるわけがないのです。
思い返せばクロードは赤ちゃんの時からそうでした。いつもイスラとゼロスの動向をチェックし、隙あらば自分もついていこうとするのです。にーさま達が行くなら自分も当然行くんだといわんばかりにハイハイで追いかけて!
「まったくあの子はっ」
私は馬の手綱を引くと、急いで転移魔法陣がある広場に向かおうとする。
でも馬を走らす前にハウストが素早く前に回り込みました。黒馬に乗馬したハウストが私を通せんぼです。
「こらこら、どこへ行く」
「どこって、クロードを冥界に行かせたままにするわけにはいきませんっ」
「連れ戻すのか?」
「当たり前です!」
私はきっぱり言いました。
冥界は気軽に遊びに行くような世界ではないのです。ハウストやイスラやゼロスはともかく、クロードはダメです。危険すぎます。
でもハウストは私を通せんぼしたまま。
「イスラが心配しなくていいって伝えてきてるぞ?」
「…………。……そうなんですか?」
私がイスラの鷲を振り返ると「ピッ!」とひと鳴き。どうやらクロードはイスラやゼロスと一緒に行動するようですね。
一人でないなら安心ですが、でも。
「……クロードはとても賢い子どもですが、まだ五歳です」
「ああ、だが次代の魔王だ」
「そうですが、でもあの子は」
言いかけて、口を閉じました。
『あの子はまだ覚醒していないんです』『あの子はイスラやゼロスのように強くありません』
そう続けようとしましたが、それはクロードが一番気にしていることなのです。それを私が懸念材料として語ることはなんだかクロードを傷付けることのような気がして……。
ここにクロードはいませんが、私はクロードを傷付けたいわけではないのです。ただ守ってあげたいのです。
そんな私の憂いにハウストが苦笑します。
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