Episode1・クロードと二人のにーさま

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「……にーさま、ごめんなさい。ありがとう」  クロードはシャツをぎゅっと握って言った。  イスラが見下ろし、視線を感じてクロードは肩を竦めて縮こまってしまう。  そんなクロードにイスラがため息をついた。 「……もういい、次からは気を付けろ」 「はい……」  クロードがおずおずと顔をあげた。  イスラと目が合うと小さな唇を噛みしめてしまう。でもイスラの手がクロードの頭にぽんっと置かれた。 「崖登りまあまあだったぞ。途中までだったけどな」 「っ、にーさま! にーさまが『まあまあ』っていいました!」  クロードの沈んでいた表情が明るくなった。  イスラの『まあまあ』は褒めてくれる時のもの。クロードは弟だから分かるのだ。  ゼロスも笑顔で褒めてくれる。 「クロード、頑張って良かったね」 「はいっ」  まだにーさま達のように登れないのは悔しいが、やっぱりこうして褒められると嬉しくなるのだ。  笑顔になったクロードにゼロスは明るく笑う。 「兄上に怒られて泣いちゃいそうだった?」 「ないてません!」 「そお?」 「そうですっ!」 「分かった分かった。それじゃ行こうか」  こうして三人は崖の上に広がっていた森を進む。  道なき道にクロードは何度も躓きそうになったが踏ん張った。こんな所で一人で転ぶのはなんだか恥ずかしいのだ。 「あっ、あったあった。兄上、あそこに見える洞窟だよ」  そう言ってゼロスが鬱蒼と生い茂る木々を指差す。  クロードにはなにも見えなかったが、もう少し近づくとぽっかり開いた洞窟が見えてきた。 「まだ中には入ってないんだけど、前回玉座に座りに来た時に見つけたんだ」 「それ以前はなかったんだな?」 「なかった」  ゼロスの説明を聞きながら三兄弟は近づいていく。  だが、近づくにつれてゼロスが険しい顔つきになっていく。 「クロード」 「はい」 「僕か兄上から絶対に離れないでね?」 「は、はいっ……」  クロードは緊張感を覚えた。  ゼロスは洞窟を見据えていたのだ。  洞窟につくとゼロスは洞窟の地面を見て「やっぱり……」と厳しい顔になった。  クロードもそこを見て「あっ」と声をあげる。そこには焚き火の跡があったのだ。もちろん三兄弟には身に覚えのないものである。……ということは。 「に、にーさまっ、これってダメなんじゃないですか!?」  クロードは焦って声をあげた。  だってこれは冥界に侵入者がいるということなのだ。  創世期の冥界は特別な許可がなければ入ることを許されない。 「正解、これダメなやつだよ。密猟者かな? 創世期は希少な動植物だらけだから」  この焚き火から分かることは、冥界に密猟者が侵入しているということ。世界を隔てる強力な結界を突破して侵入するくらいなのだから、密猟者はそれなりの魔力を持っていると考えてもいいだろう。  ゼロスは焚き火の跡を調べだす。
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