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「この焚き火、使われてからそんなに日が経ってない感じだ……。今も冥界のどこかに潜んでるかもしれない」
洞窟周辺に不審者の気配はないが、それでも冥界に侵入されていることははっきりしている。
「仕方ない、密猟者退治だ。今日は冥界に泊まってく」
「ああ、そうしろ」
イスラは当然とばかりに頷いた。そういうことも冥王の役目だ。
だが。
「もちろん兄上も一緒に密猟者退治してくれるよね」
「ふざけるなよ」
イスラが目を据わらせた。これには頷けない。
そもそもゼロスだけで充分対処できる案件だ。
しかしゼロスは眉を八の字にして不満顔になる。
「ええ~~っ、僕になにかあったらどうするの? 兄上だって心配でしょ?」
「お前になにがあるのかぜひ見てみたいくらいだ。お前はただ一人だけ冥界に残るのが嫌なだけだろ」
「あ、バレた? だって兄上とクロードは魔界に帰ってブレイラとお茶したりおしゃべりしたりするのに、僕一人だけ冥界に残るのは寂しいじゃん。ね?」
「なにが、ね? だ」
イスラは呆れた顔になる。
ゼロスは子どもの頃から無邪気で素直なタイプだが、それは今も変わっていないのだ。それどころかとんでもなくタチの悪い甘え上手に成長している。ブレイラは『ゼロスは純粋さんですね』などと言ってなでなでしているが、ブレイラ以外はそんな可愛いものではないと思っている。ゼロスに関わるととにかく振り回されるのだ。
「お願い、兄上! 密猟者退治に付き合ってよ!」
お願い! とゼロスが手を合わせる。
イスラは腕を組んで盛大なため息をついた。諦めのため息だ。
「……まあいい。付き合ってやる」
「やった~っ、さすが兄上! ありがと~!」
イスラの協力が決まってゼロスは大喜びだ。
次はゼロスからクロードに声がかけられる。
「クロードはどうする? 協力してくれる?」
「え、わたしも!?」
クロードは驚きに目を丸めた。
だって誘ってもらえるとは思わなかったのだ。
「無理そうだったら魔界に送ってあげるけど……」
「き、き、きょうりょくします!!」
クロードは勢い込んで答えた。
にーさま達と密猟者退治なんて夢みたいだ。お留守番ばかりだったのでこういうのにずっと憧れていたのだ。
「クロードも大丈夫そうだね」
「だいじょうぶそうです!」
「えらいえらい。それじゃあ、みんなで力を合わせてがんばろー! おー!」
「おー!」
思わずクロードも拳を突き上げた。
クロードの顔は紅潮している。にーさま達と密猟者退治に大興奮なのだ。
こうして三兄弟は急遽密猟者退治をすることになった。
弟たちの「えいえいおー!」にイスラも小さく笑ったのだった。
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