Episode1・クロードと二人のにーさま

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「クロード、気を付けてね! すぐそこの洞窟前の川を使うんだよー!」  洞窟にいるゼロスが大声で呼びかけてくれながら、大きく手を振っている。  ゼロスはクロードを視界に入れながら夕食の調理をしていた。一人で川に向かうクロードが心配なのだ。  クロードも「はい!」とお返事して手を振り返す。こうやって『わたしはだいじょうぶです』と伝えると、ゼロスは安心したような笑顔になった。  その笑顔にクロードは照れ臭い気持ちになる。大切に思われていることがとっても伝わってくるのだ。  これはゼロスにーさまだけではない。イスラにーさまもブレイラもちちうえも、みんなクロードが大好きで大切だ。クロードも家族がとっても大好きだ。厳しいこともあるけれど優しいのである。だから大好き。  大好きだけど、大好きだけど…………。思いだすのはさっきの焚き火のこと。  焚き火の炎が小さくなってしまってクロードは慌ててフーフーしたけれど、ゼロスがあっという間に元に戻してしまった。  クロードは焚き火の番をにーさま達から任された時、とても嬉しかった。密猟者退治に協力してくれる? と誘ってもらえて、焚き火の番を任されて、にーさま達から必要とされている気がしてとても嬉しかった。  でも本当は焚き火の番なんて最初からいてもいなくても良かった。そう気付いてしまったのだ。 「…………」  クロードの視線が無意識に下がってしまう。  もやもやした嫌な感覚を覚えてしまう。それはクロードにまとわりついて、どんどん息苦しくなっていく。  もやもやにズブズブ沈んでいきそうになって、慌てて首を横に振った。考えちゃダメだと思ったのだ。  クロードは川辺までくると、しゃがんで川の水でバシャバシャ顔を洗った。  ハンカチで顔を拭く。おでこもふきふきして……。 「!? し、しまったっ……」  クロードはハッとした。  前髪が水に濡れておでこに張りついているのだ。  このままじゃダメだ。ハンカチで前髪を拭いてなんとか元に戻そうとする。 「もどったかな?」  なでなでして確認だ。大丈夫、前髪はまっすぐ下りて元通り。  ほっとひと安心していると斥候を終えたイスラが戻ってきた。川辺のクロードに気付いて眉を上げる。 「クロード、なにしてるんだ?」 「イスラにーさま、おかえりなさい。かおあらってました」 「そうか、戻るぞ」 「はいっ」  クロードも立ち上がってイスラについて行く。  でも足元の木の根に気付かず躓いてしまう。 「わあっ」 「おっと、危ないだろ。気を付けろ」 「は、はい……」  寸前のところでシャツを掴まれた。  転ばなかったけれど、まるで子猫のようにあしらわれた気分だ。恥ずかしい。  クロードは礼を言ってまた歩き出す。今度は転ばないように足元に気を付けながら。  こうして二人はゼロスがいる洞窟に戻ったのだった。
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