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洞窟で夕食を終えるとあとは眠るだけである。
明日は朝から密猟者退治なので今夜は早く眠らなければならない。
だが。
「……。……」
ごろごろ。ごろごろ。
クロードは先ほどから何度も寝返りを打っていた。
イスラは洞窟の壁に凭れて静かに目を閉じている。ゼロスは気持ち良さそうに眠っている。眠れないのはクロードだけだ。
就寝しなければならないのに洞窟のゴツゴツした地面が気になってなかなか寝付けないのである。
クロードはこういった野宿は初めてではない。
むしろ赤ちゃんの頃から冥界に来た時に家族で野宿することもあったくらいだ。
でもその時は野宿を想定しているので就寝時のラグなど準備万端である。しかもブレイラが手招きして隣に呼んでくれるのだ。
『クロード、どうぞこちらに来てください』
呼ばれるとクロードは嬉しくなった。
その時のクロードは、ほんとうは走って側に行きたいのをぐっと我慢して『わたしはもうあかちゃんじゃないんですけど……』なんて言いながらブレイラの隣に潜り込むのである。だってちちうえもにーさま達もいるのに、自分から甘えに行く姿なんて見せられない。
そんなクロードにブレイラは小さく笑っていた。
『寒くないですか?』
『さむくないです』
さむくないと言ったのに、ブレイラはクロードの肩まで布団をかけ直してくれる。
それはクロードをくすぐったい気持ちにして胸をポカポカ温かくする。温もりに包まれるとクロードは安心してどんな場所でもスヤスヤ眠れるのだ。
でも今ここにブレイラはいない。地面のゴツゴツがいつもより気になって寝入ることができない。
クロードは何度も寝返りを打っていたが、ふと声が掛けられる。
「クロード、眠れないのか?」
「にーさまっ」
ハッとして振り返るとイスラがクロードを見ていた。
クロードの寝返りに声を掛けてきたのだ。
「……ご、ごめんなさい」
「大丈夫だ。気になることでもあるのか?」
「……ないです」
まさかブレイラの添い寝がないから眠れないなんて言えない。あまりにもかっこ悪すぎる。
もしそんなことがにーさま達にばれたら、もう二度とお出掛けに誘ってもらえないかもしれない。それだけは嫌だった。
「そうか、それなら早く寝ろ。明日は早いぞ」
「はい、おやすみなさい……」
そうだ、明日は早いのだ。早く寝て明日は一番早く起きるのだ。
クロードは心に決めると、ぎゅっと目を閉じて小さな体を丸めたのだった。
◆◆◆◆◆◆
魔界、魔王の城。
私とハウストは夕食の後、居間で二人きりの時間をすごしていました。
二人きりといっても、そこにいつものような穏やかな雰囲気はありません。
「あの子、ほんとに今夜は帰ってきませんでした……」
大きなため息をついてしまう。
あの子とはもちろんクロードのことです。
今日、イスラの召喚獣が手紙を二回届けてくれました。
一回目はクロードもイスラやゼロスと一緒に冥界へ行くというお知らせ。
二回目は冥界に密猟者が侵入しているから退治するという内容。もちろんクロードも一緒に。
二回目の手紙を受け取ったあと私はすぐに自分も冥界に行こうとしました。イスラとゼロスが急遽外泊することになるのは初めてではありませんが、クロードにとっては初めてなのです。このまま放っておけるはずがありません。
しかしハウストに説得されて我慢することになったのです。
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