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本当の彼
彼の身体がまばゆく光り輝く。私は思わず目を閉じた。数秒後、恐る恐る目を開けると、そこには、ウサギがいた。
正確に言うと体長1mくらいの、ウサギによく似た生物。真っ黒でビー玉みたいな丸い目。ちょこんとついた鼻。小さな口。全身をフワフワとした白い毛で覆われ、二本の耳がピンと空を向いている。そして人間と同じように、二本足でしっかりと立っている。
「これが、本当の僕だ」
「…可愛い…」
私は、我知らず跪くと、彼のことを抱きしめていた。その体は温かい。
「ウサギに似ているだろう。僕たちも驚いたんだ。そっくりな生物が地球にいる、ってね」
「怜音が宇宙人でもウサギでも、なんでもいい。愛してるの。どこにもいかないで…」
私はあふれる涙をおさえきれなかった。
そして、言葉と裏腹に、本当はわかっていた。怜音との別れが近いということを。
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