5人が本棚に入れています
本棚に追加
「律、前にもその話していたよね。俺には聞こえないな。一度、病院に行って相談してみたらどう?」
私は顔をしかめた。
「高校のとき耳鼻科に行ってみたら、生理的なものだから気にしなくていいって言われたの。確かにね。周りに音があるときには気にならないから、生活に支障はないんだけど」
「今みたいに静かな場所でなければ、ね」
怜音は私を抱き寄せて口づけると言った。私たちが今いる場所はシティホテルの一室だ。あたりはひっそりと静まり返っている。
「ふふ、そうね。家に帰ったら家族がいるし、職場はなんだかんだ誰かしゃべっているし在宅勤務のときは音楽聴きながらやってるし。普段、なかなか『無音』のときって無いから気にならないんだけど」
「『静けさ』って贅沢なのかもしれないよな。現代人にとって」
怜音が言う。
最初のコメントを投稿しよう!