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「とみーはかみのんに片想いしてるんだね。だからかみのんのことでこんなに必死になるんでしょ?」
「そうだ。だから変な動画はこの世から完全に抹殺しろ」
「いくら出してくれるの? 私もヴィトンが欲しいんだけど」
「ど、動画の内容による……早く見せろっ」
神乃のそんな姿なんて可哀想で見たくない。でも、内容の確認はしなければならない。
「とみー、エッチだね!」
「そういうことじゃないっ!」
「えっとね、内容としては、目隠しされてるかみのんがお尻に大人のオモチャを突っ込まれながらにーくんに意地悪されてアンアン言ってる感じ?」
「…………っ!!」
衝撃的すぎる。仁井のためにそこまでするか?! しかも目隠しされていたとしたら神乃は動画を撮られていたことに気がついていないかもしれない。
「観る? かみのん可哀想じゃない? そんなのとみーに見られたら」
「仕方がない。お前のハッタリかもしれないだろ?」
「……バレた? 無いよ、そんな動画」
「はぁ?!」
こいつ、あっさりと認めやがって……。
「正確にはなくなった。私が消したの。にーくんが、私にこれと同じことをしてもいいかって訊いてきて、かみのんの動画を見せてきたんだ」
「それで?!」
「私はこれは無いなと思って、にーくんにはこんなことしたくないって断ったし、その時かみのんの動画もスマホから削除してやったの。あれはさすがにヤバくない? と思って」
「そうか……」
「にーくんは『スマホにしか動画が入ってないんだぞ!』『これしか無かったのに!』ってめっちゃ怒ってたから、他のところには動画は保存してないんじゃないかな。どう? 私偉いでしょ?」
「まあな……」
藍羅の言うことが本当ならば、かなりのファインプレーだ。世の中には別れたあと、そういういかがわしい動画を使って元恋人に復讐するリベンジポルノなるものがある。
もし動画が仁井の手元にあったら、それを使って神乃が嫌がらせを受けた可能性だってあった。
「だから、ね? 私にもヴィトン、買ってくれる?」
藍羅が富永の腕にねだるようにしがみついてきた。
動画が本当に存在していたかどうかはわからない。だが、仁井ならそういうこともやりかねないと思う。
藍羅が嘘をついている可能性もある。証拠がないと突っぱねて、追い返すか……。
神乃のためには事を穏便に終わらせて金輪際こいつとは縁を切るべきた。
「わかった。ヴィトンだな」
「ホント? 本当に買ってくれるの?!」
「うるさいな。でももうこれで最後だ」
「でも今回は買ってくれるんでしょ? やったーっ! ありがと!」
「藍羅、離れろよっ」
富永は振り払おうとするが、藍羅は離れない。
「やーだ!」
藍羅は富永の腕に頬を擦り寄せてきた。思い切り振り払ってしまいたいが、万が一どこかにぶつかって怪我でもされたら困るので強くは拒絶できない。
「ねぇ、私たち付き合おうよ」
「ありえない。お前とは今日で終わりだっ」
「えー。なんなの、とみーもにーくんもかみのんかみのんってさ。かみのんばっかりモテてずるい!」
「仁井も神乃がいいって言ってるのか?!」
たしかに仁井は神乃に未練がありそうだった。わざわざ富永のマンションにまで追っかけてきたのだから。
「そうだよ、かみのん居なくなってから、どれだけかみのんが尽くしてくれたかやっと気がついたんだって。今度こそやり直したいとか言ってたよ」
「お前はまだ仁井と連絡とってんのか?」
「うん。だって同じ職場だし」
なんて奴だ。職場の同僚と浮気をして、別れてからも普通に接せられるものなのか?!
富永としては理解に苦しむ。
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