7.明るみになる事実

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 藍羅とヒロくんがいなくなったあと、神乃は部屋のドアの隙間から、隣の部屋の様子をじっと伺う。  そして藍羅ひとりが部屋から出てきた瞬間、廊下に飛び出した。 「藍羅、大変だ。予想外のことが起きた」 「えっ?」 「富永に飲ませ過ぎたんだ。あいつはあれからリバースして、着替えも必要だし、その……言いにくいが今はちょっと近づかないほうがいい」  これは神乃の嘘だ。富永の様子はあれから変わらない。ベッドで休んだままだ。 「だから計画は中止に——」 「は? 今さら交換なしとか無いからね」  藍羅とふたり、小声で言葉の応酬だ。 「どうすんのよっ」 「そう言われても……」  神乃は考えるふりをする。 「わかった。朝に変わろう。あの様子じゃ朝まで富永は動けない」 「朝に……?」 「ああ。夜に何かがあったように偽装しておくんだ。それで朝、富永が起きる前に俺と藍羅が入れ替わる。富永が起きたら藍羅は責任を取れと迫る。富永が憶えていないと言っても、朝起きて部屋に藍羅とふたりきりなら自分が酔って何かをしでかしたと思い込むんじゃないのか?」 「うーん……」  藍羅は考え込んでいる。 「とみーに抱いてもらいたかったのに……。でも、いけるかも。とみーは信じやすいタイプだもんね」  藍羅は一度、富永を騙せたから、今回もいけるだろうと高を括っているようだ。 「今日のところはそれしか方法がないだろ。また朝になったら連絡をくれ。その時点でお前と入れ替わる。俺は富永の具合を見てくるから、また後でな」 「いいよ。わかった」  藍羅の含み笑いが気になったが、とりあえず嘘をついてこっちの条件は呑んでもらえた。  これでなんとか朝まで富永を守ることができる。
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