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富永は自らの欲望を叶えたあと、ドサっとベッドに身体を横たえ動かなくなった。賢者タイムもないくらい、そのまま眠りに落ちたようだ。
「はぁ……っ、はぁ……」
びっくりした。いろいろびっくりした。
いきなり富永に襲われたことにも驚いたし、富永が別人みたいに荒々しく神乃を抱いたことにも、いつもは100%コンドームを使う富永に許可もなく中に放たれたことにも驚いた。
そしてその激しさに感じてしまった自分自身にも。
まだ自分の中に富永から放たれたものの存在を感じる。
神乃は男だからいいが、もし女だったら妊娠する可能性だってあった。
もし自分が女で、これで妊娠したとしたら、富永は責任をとって籍を入れ、良きパパになってくれるのだろうか。
そんなありもしない、くだらないことを考えている場合じゃない。
神乃は眠ってしまった富永の頬にそっとキスしてから、行動を開始した。
まずはシャワーを浴びて、神乃自身を整える。着る服は適当な普段着だ。
次にやるべきことは富永の着替えだ。富永がリバースして着替えさせたという、藍羅との話の辻褄を合わせるためだ。
神乃は自分の荷物からネイビーのリラックスウェアを取り出した。この服のほうが富永もゆっくり休めるだろうし、富永はこの神乃からのメッセージに気がついてくれるかもしれない。
さっきの行為で半裸状態の富永の服を脱がせて、代わりにゆるいスウェットの上下を着せる。
このまま富永にはベッドで朝までゆっくり休んでもらおう。
それから藍羅に貸すための自分の服を、よく目につくように、備え付けてある棚の上に置く。
準備はこのくらい。あとは藍羅から連絡が来るまで少し眠るとするか。
この部屋にはキングサイズのベッドがひとつしかないため、神乃は富永と同じベッドに横になった。
徹夜なんてしたくない、少しでも眠りたいと思っているのになかなか眠れない。
富永の寝顔を眺めたり、目を閉じてみたり、神乃は落ち着かない夜を過ごした。
朝になり、藍羅に呼び出されたので、神乃はそっと部屋を抜け出した。
廊下で藍羅と出会う。藍羅はTシャツに短パン、スニーカーというラフな格好をしていた。
「ヒロくんはまだ寝てるよ。今から同じベッドに入ってしれっと寝てれば、ヒロくんのこと騙せるんじゃないかな」
藍羅はヒロくんと神乃の間にも夜の過ちがあったように見せかけて欲しいらしい。もちろん神乃にその気はないが、神乃は恋人交換に協力的な態度を装うため「わかった、そうしてみる」と頷いてみせた。
「藍羅は部屋に入ったら、棚に置いてある俺の服を着ろ。紺色のスウェットで、富永が見ればひと目で俺のものだとわかる。昨日の夜、富永に襲われて汚れたから、部屋のシャワーを浴びて勝手に俺の服を使ったことにすればいい。なんかリアルっぽいだろ?」
「あー、いいじゃん。それやるね」
藍羅は同意した。藍羅は神乃の真意には気がついていないようだ。
これだけ協力的な態度でお膳立てまでしてやればじゅうぶんだろう。
そして藍羅と交差して、藍羅は富永のいる部屋へ、神乃はヒロくんのいる部屋へと入っていった。
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