7.明るみになる事実

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「そんなものは後でやれ!」  富永の声にふたりがビクッと肩を震わせた。 「藍羅の彼氏さんは、ちょっと話してすぐにゲイだとわかったよ。お前が神乃を見る目は明らかに熱っぽかった。俺の恋人だと知りながら、神乃に一目惚れか?」  富永はヒロくんが男が好きだと言うことを見抜いていたのか。神乃はまったく気がつかなかった。いつ、ヒロくんからそんな熱っぽい目で見られていたのだろう。 「ゲイなのになんで女の藍羅と付き合ってたんだ? カモフラージュか何かか?」 「は、はいっ……」  ヒロくんは富永にまた吹っ飛ばされるのではないかと怯えているようだ。 「付き合ってた藍羅がクソ女と知って、そのとき神乃に出会ったのか? それで神乃が欲しくなった。それでお前はさっきみたいな卑劣な真似をして無理矢理にでも神乃を手に入れようとした。お前、あれは犯罪だぞ?」 「いやっ、だって神乃さんから誘ってきたんです! 俺と藍羅を恋人交換してくださいって!」 「はぁ? お前は恋人交換が藍羅の考えた、くだらない話だと知ってただろ? 決して神乃が言い出したことじゃない。なのにそれで神乃の同意を得たって言い訳するのか? ふざけんな!」  富永はヒロくんの胸ぐらを掴んで睨みつけたあと、ドンッと突き飛ばした。 「そして神乃!」  富永は神乃のほうを振り返った。その目にはいつもの優しさはない。富永は完全に怒っている。  それも当然だ。神乃のせいでこんなくだらないことに巻き込まれて、富永は一番の被害者だ。 「お前が一番意味がわからない。まさか俺と別れたかったのか?!」  富永が迫ってきて、神乃の腕を強く引っ張った。 「時間はある。ゆっくり話を聞かせろ」  富永に引っ張られ、神乃は隣の部屋に連行された。
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