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「神乃は俺を侮ってる。俺なら藍羅くらい騙せるはずだ。俺の演技力は並じゃない。中高とずっと神乃を騙し続けてきたんだからな!」
「えっ?」
「あの頃の俺は、どっからどう見ても友達にしか見えなかっただろ?」
「あ、ああ……」
確かに。富永はクラスの人気者で、地味な自分とも仲良くしてくれる稀有な奴だと思っていた。
「ほら。あれだけのデカい感情を六年間隠し通したんだ。本当は神乃に片想いしてたのに、友達として演技を続けてたんだから」
富永は自慢げに言うが、それとこれとは少し演技の意味合いが違うだろと思う。
「それなら俺だって。俺だってずっと、富永のこと好きだった……」
「ん……? へっ? いま、なんて?!」
なんで富永はそんなに驚いている……?
「だから、俺も昔から富永が好きで——」
「いつから?!」
——あれ。俺はその話を富永にしてこなかったのか。
「だっ、だから、中学の頃から」
「マジで?! 神乃が、俺のことを?!」
「う、うん……今だから言えるけど、ずっと富永に憧れてた。お前はモテモテだったし、まさか男の俺を受け入れてくれるなんて思わなかったから、黙ってたけど」
「……知らなかった」
あの頃は、さすがの富永も神乃の隠していた気持ちに気がつかなかったのか。
「本気で知らなかった。知ってたら、俺、学生の頃に神乃と付き合えてたのかな……」
「うん……」
もうすっかり大人になってしまった。あの頃の自分たちがどうなったのかまではわからないが、富永に告白されたら神乃はそれを受け入れたと思う。
「惜しいことしたな。神乃と学生デートしたかった……」
「まぁ、10代の俺は今と違って見た目も若かったしな」
やっぱり富永も若い肌がいいのかなと思っていたら「違う!」と全力で否定された。
「色気で言ったら今のお前、やばいぞ」
「……は?」
「男を誘うフェロモンでも振りまいてるのかってくらいにやばい。現にヒロくんがお前に一撃で悩殺されたじゃないか」
「はぁっ?!」
富永はいきなり何を言い出すんだ?!
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