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「ということはやめちゃうのかなぁ。タダで多希くんのご飯食べられるんだからな」
「やめないそうですよ。もしかしたら、仕事が忙しいから週一に変更するかもしれませんが。……そのことについては、すみません」
貴重な週二回通いの生徒を減らすことについては、申し訳なく思う。
三好は軽く「別にそれはいいけどさ」と、紙片をひらひらとさせながら言った。
「多希くんが退職しないでくれてよかったよー! それだけが気がかりだった!」
「……はい?」
「だって久住くん大企業勤めだし、多希くん一人養うくらいさぁ……」
「辞めませんよ。そんな簡単に。何でそんなに久住さんのこと知ってるんですか。仲いいんですか、久住さんと」
勘繰る多希に、三好は「申込書に書いてもらってるからね」と種明かしをする。
裏でこそこそと多希のことを聞いていたり、久住に余計なことを吹き込んだものと思っていたから、勘違いに多希は顔を赤くした。
……────。
会社での手続きも無事終わり、週末は久住が荷物運びを手伝ってくれる。
引っ越しといっても家電はほとんど処分してしまうため、持っていくものは少ない。
何回かに分けて、久住の借りたレンタカーに詰め込んだ。
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