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──久住さんと付き合った人は、大変そうだな……。
テレビの音量やリモコンの位置まで、マイルールが敷かれていそうだ。
持ち帰り用の容器へ移すのにも苦戦していたため、多希は手伝ってやる。
一挙一動を羨望の眼差しで見つめられていることに気付き、多希の顔は熱くなる。
「由衣濱先生。本日はありがとうございました。至らない点がありましたら、何でも仰ってください」
「特には……大丈夫ですが。あ、包丁の扱い方はもう少し慣れてもらったほうが、いいかもしれません」
「はい。復習しておきます」
──堅い。
久住は手帳にボールペンを滑らせながら答えた。
久住の向上心は素晴らしいが、最初から全力で飛ばした結果、空振って反転してしまわないかが気がかりだ。
健康診断書が散々な結果だったから、久住が躍起になる理由も分かるが……。
──せっかくだし、つくるのも食べるのも楽しんでもらわないと。
多希の心には、使命感のようなものが燃えていた。
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