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Lesson.2
午後十八時。夜の講義のため、早めに軽い夕食を済ませた多希は、参加予定の生徒を確認する。
多希の働く料理教室では入会すると会員ページが与えられ、そこで講義の予約を行うことができる。
──久住 崇嗣
十九時からの講義に参加する名簿のリストを見て、真っ先にその名前が飛び込んでくる。
「にやにやしてんねぇ。多希くん」
「はっ、はい? 何でしょう?」
後方から声がかかり、多希は頭の中を仕事モードに切り替える。
三好は空いている隣のデスクから椅子を引き出し、多希の横へ並ぶ。
「にやにやなんてしてませんよ」
「そう? じゃあ、無自覚かな」
「だからしてませんって」
休憩中に三好はいつも絡んでくる。
親しい先輩だからというのもあるが、体験入会前から久住が一番高い週二回のコースへ契約したので、三好にはあらぬことを疑われている。
「多希くん美人だから。彼、やる気だね」
「何言ってるんですか。前にも話しましたけれど、健康診断の結果が悪かったから自炊を頑張りたいそうですよ。俺以外でも契約取れてます」
「そうご謙遜しなさんな」
「……謙遜ではなくて、勘違いされているから正しているんです」
多希はこれ見よがしに溜め息をついた。
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