Lesson.2

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赤く滲んでいる傷もあるが、どれも深くはなさそうだ。 小学校に入る前から親と一緒に料理をしていた多希にとって、切り傷は日常茶飯事のことだった。 当然、手当てにも慣れている。 念のため、消毒をしてから傷のある部分を、絆創膏で保護する。 少し節張った細く綺麗な指は、接ぎ木をしたみたいに絆創膏だらけになった。 「ありがとうございます。由衣濱先生は料理だけでなくて、傷の手当てまでプロ級なんてすごいです」 「……普通ですよ。このくらい」 久住は手当てしたばかりの手をしばらく見つめていたが、多希が呼びかけるとすぐに我に返った。 講義中、また指に傷を増やさないかと、多希は内心はらはらしていた。 以前よりも包丁の扱い方は上手くなったものの、添える手の位置が危なっかしいときがある。 今日の講義が終わった後、何だかいつもより元気のない久住に声をかける。 「久住さん、お疲れさまです」 「……お疲れさまです」 やはり仕事の帰りが遅く、金曜日ということもあり、疲労がどっと溜まっているようだ。 久住は恐らく無意識なのだろうが、ことあるごとに溜め息が多希の耳に聞こえてくる。 「お仕事お忙しそうですね。自炊は順調ですか?」 「はい、まあ……毎日つくるようにはしています」
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