Lesson.1

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あらかじめ下調べしておいた、無人のホテルへと入る。 先にシャワーを浴び、スマホをいじるのに夢中になっていると、大きな影が降ってきた。 多希の項に、水滴が落ちる。 「何してんの」 「別に。暇だったから」 「冷たくない?」 すぐ後にくすっとからかうような笑い声を漏らす。 手首を絡め取られ、頭上で一纏めにされる。 いきなり何をするんだと抗議しようとしたら、唇を塞がれた。 わざと音を立てて吸いつかれ、奥底に眠る情欲のスイッチが入る。 新しい恋人はつくらない。 男同士の恋愛に本気になって、もう痛い目は見たくない。 痛くないはずの失恋の古傷が、時折幻想のように浮かび上がっては、多希を苦しめる。 深入りはしたくないけれど、適度にセックスは後腐れなく楽しみたい。 身体の関係だけを求める多希にとって、マッチングアプリは便利なツールだった。 売りをしているわけではないが、今まで会った相手には見た目も相性も期待以上だったと、言われることが多い。 相手の気をよくする褒め言葉は、多希には面倒なだけだった。 もう一度したいほど嵌まる相手もいなかったし、次を期待されるのが重い。 リアルの付き合いのない相手は、ブロックボタン一つで関係が切れる。 心も痛まないから楽だ。
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