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「あ……ん」
他のことに思考を巡らせていた多希を叱るように、男の手が下肢のものに触れる。
先端がぬるついてくると、男は手際よくそれを使って後孔を指で広げていく。
「すぐ柔らかくなった。普段から自分でしてるの?」
「してな……あ、あぁ……」
返事はほとんど快楽でぐずぐずに溶けてしまっている。
「噓」と断言する声を、正直な多希は否定できなかった。
腹側にある、最も感じる場所を指で捉えられると、久しぶりの感覚に頭が真っ白になる。
互いの腹の間で硬くなっている熱が、欲しくて堪らない。
男のものを引き寄せ、多希は「早く」とだけねだった。
多希の余裕のなさに気をよくした男は笑みを浮かべ、押し入ってくる。
自分の指や玩具とは違う、生々しい感触に、ぽかりと寂しく空いた心の穴が満たされるようだった。
「やば……気持ちいい。今、軽くイった?」
「ん、イった……から。はやく……うごいて。ずっとは、つらい」
何も考えられないようにしてほしい。
それを口にするのは、自棄っぱちになったような気がして憚られた。
セックスをしたかったから、誘ったのだ。
自棄なんかじゃなくて、自分がしたかったから──そんなふうに思いたい。
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