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休憩を挟んで三回。
ホテル代は割り勘でも、誰かを買うよりはずっと手頃で簡単だった。
プライベートの話も一切しなかったし、今夜の相手は当たりだ。
身体を動かした後、そのまま眠りに落ちるときほど、気持ちのいい時間はない。
多希は重い瞼を持ち上げて、部屋にいる男の様子を窺った。
「え、何これ。頼んでないけど」
「あ、お腹空いたから俺が頼んだの。食べて食べて」
勝手にホテルに頼んだらしい軽食が二つ、ベッド向かいのテーブルに並べられている。
安っぽいサラダとパスタ。
職業柄、多希はレトルト食品は一切食べない。
便利なのは納得するが、好みの味がないからだ。
「俺、気が利くでしょ?」と鼻にかける男に、多希はお礼ではなく溜め息を溢した。
──セックスはよかったのにな。
多希はスマホに来ている連絡を捌くふりをしながら、アプリを操作して目の前の男をブロックリストに追加した。
「由衣濱、っていうの?」
「……なに、勝手に見た?」
「ごめんって。スマホ鳴ってて起きたら、画面光ってるの見えちゃったから」
多希のスマホにはパスコードのロックがついている。
さすがに中までは弄れないだろうから、男の説明で間違いないのだろう。
確信的なのに、うっかり見えた事故だったと装っているのが気に食わない。
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