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多希がいくら不機嫌を顔に表そうとも、男には「次」があると思っているらしい。
多希は無言で味の偏ったペペロンチーノを食べ、きっちりホテルと飯代を半分置いてきた。
──次の相手、探さなきゃな……。
眠気の残る頭でぼんやりと考えつつ、アプリを立ち上げるもピンと来るような相手はいない。
1LDKの自室へと帰ってくると、多希は十二時にスマホのアラームをセットして、眠りについた。
……────。
多希の働く料理教室「Allegro」は、講師は皆シフト制だ。
基本給は十九万円、後は生徒の指名料がプラスされる。
多希は学生時代からアルバイトをしていたバーでそのまま卒業後も働き、その後はイタリアンのレストランに転職した。
夜の営業が長く、残業もほぼ毎日といっていいほどあったため、体調を崩しがちだった。
そんな時、新しい事業の起ち上げを考えていた先輩に、声をかけられたのがAllegroに入社したきっかけだった。
「多希くーん。体験申し込みの生徒さんが一人来てるから、対応してくれる?」
「はい、分かりました」
講義が終わり、コーヒーを飲んで一息ついていたところ、三好に声をかけられる。
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