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薬学部へ進学した後は、美術系の科目などはないのだからと高を括っていたが、それも見通しが甘かった。
必修科目である実習が、久住の前に大きな壁として立ちはだかったのだ。
化学系の実験では毎日フラスコや試験管を割って、破損届を書いては教員に謝り倒しの日々。
解剖学の実習では、マウスの毛皮と肉を断ち切るつもりが、ハサミを深く入れ過ぎて血管を傷つけてしまい、辺りを血まみれにして女子には引かれた。
一応、レポートはそこそこ真面目に書いていたので単位はもらえてはいたし、勉強自体は楽しかったので失敗は苦ではなかった。
しかし、久住が地獄を見たのは、四年次に受けるOSQE/CBTの試験だった。
六年制の薬学部では、五年次に病院と薬局の実習へ行くための事前テストとして行われる。
実習試験のOSQEとパソコンを使った試験のCBTをパスしなければ、次年の実習には行かせてもらえないため、実質的な留年となる。
対策さえしていれば、特に落ちるような試験でもなく、久住の学校でも合格率は百パーセントだった。
薬の取り揃えや監査、散薬の分包など、各項目を五分以内にこなさなければならない。
猿よりも不器用な久住には、そのどれもが難関だった。
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