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決して冷やかしなどではなく。
そして、久住はそこで運命的な出会いをしたのだった。
サラサラの甘栗色の髪に、男にしては白いけれど不健康さを感じさせない綺麗な肌色。
久住よりも背は少し低くて、体型はしゅっと締まって細め。
まさに同性愛者である久住の理想を寄せ集めたような人が、現れたのだ。
完全に下心ありきで入会を即決した。
週二回、仕事終わりと休日に由衣濱先生に会えると思うと、凝り固まっているはずの表情筋がそのときだけ都合よく緩む。
幸い、友人や親からは「表情筋が死んでるね」と日頃から言われていたので、多希相手には粗相をせずに済んでいる。
理想に出会えたからといって、多希はゲイなのかどうかは分からないし、久住の好意はそこで止まった。
もちろん、付き合えればそれは願ったり叶ったりなのだが、ゲイだと知られて多希との間に距離ができるのも困る。
それならば、と久住はせめて目の保養にとどめようと、覚悟を決めたのだが。
──「よかったら今晩、食べに行きませんか?」
仕事終わりに、普通であれば、ただの一生徒をプライベートで飲みに誘うなんてあり得ないはずだ。
──これは……もしかして、由衣濱先生は俺のことが好き……?
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