Lesson.4

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久住を勘違いさせて舞い上がらせるには、十分なほど魅力的な誘いだった。 『これ美味しい。トマトとベーコンの串焼き』 『久住さんって意外と睫毛長いですね』 『家の鍵がなくて』 久住は確信した。 多希は自分と同じ同性愛者で、これはれっきとしたお誘いなのだと。 据え膳食わぬは男の恥。久住がやや強引に組み敷いても、多希は本気で抵抗はしなかった。 少しはされたものの、逆に先生相手にいけないことをしているのだというマニアックな方面に思考を助長させた。 結果的に言うと、多希との身体の相性は最高だった。 潮を吹いた多希が、枕を顔に抱き寄せて「はずかし……」なんて、全身を咲き染めたときなんてもう……。 「へぇー。最近の若い子ってオシャレやなぁ。料理教室って。久住くんタダでさえモテるのに、ますますモテてしまうな!」 「残念ながらモテモテではないですよ」 「えー! 彼女は?」 「いないですね」 近藤は久住の渡した資材をうちわにして仰ぎながら、またも驚嘆の声を上げた。 何をそんなにびっくりされるのかが、久住には分からなかった。 「そういえば久住くんって、薬剤師の免許は持ってるんだっけ」 「あ、はい。一応は」 久住の同僚は薬学部とその他学部の出身が半々くらいだ。
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