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ここの料理教室の社長で、多希を事業に誘ってくれた学生時代からの男の先輩だ。
多希より四歳上で三十半ばだが、ルックスが派手なので若々しく見える。
「珍しいですね。男の人なんて」
「でしょ? しかも二十九って若いよねー。結構イケメンだったよ。多希くん好みの」
「俺は別に……仕事で人をそういう目では見ませんから」
三好はブラックコーヒーを啜りながら、にやりと笑う。
三好は多希がゲイであることを知っていて、時折こうやって冗談を交えてくる。
下手に触れないようにされるよりも、かえって気が楽だ。
記入済みのヒアリングシートを手渡され、多希はそれを確認する。
久住 崇嗣。二十九歳。会社員……。
Allegroに男の生徒は若干名いるが、全員が他の講師の受け持ちだ。
「今回も多希くんの顔とトークで、バシッと入会決めちゃってね」
「善処します」
ヒアリングシートの内容を頭に入れながら、多希は笑って答える。
「自炊を頑張ろうと思ったからです」……入会希望欄が家事の手伝いを始めたばかりの子供のようで微笑ましい。
──あれかな。彼女とかに、言われたのかな。
弁当男子という言葉が流行ったように、最近は男女関係なく家事能力が求められる時代だ。
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