Lesson.4

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社長である三好の誘いに、多希はすぐに支度をしてついて行った。 週半ばの夜、普段なら外を歩かない時間に酒屋をうろつくのは新鮮だった。 リーズナブルな価格帯のフレンチ居酒屋へ入ると、三好は生ビールを二つ注文した。 「多希くん今の仕事大変?」 「大変……というか、生徒さんが増えてきて、ちよっとまだ慣れないというか、ついていけてないだけです。ご心配をおかけしてすみません」 「多希くんの受け持ち、削って他の人のところに回そうか?」 「え……」 このところ定時に仕事を終えられていないのを、三好は把握しているのだろう。 キャパシティの問題でもあるが、業務が捗らないのは精神的なものだ。 「久住くんと何かあったの?」 「な、何でそこで久住さんが出てくるんですか」 「多希くんと言えば久住くんだろ。彼、絶対に多希くん以外指名しないから。他の講師も知ってるよ」 それはゲイであることも知られているということなのだろうか。 表情を暗くし、酒が進んでいない多希に対して、三好は二杯目をお代わりしている。 「多希くんの欠点は頑張り過ぎることだな。業務外でも、生徒さんとよく話し込んでるだろ。まあ……程々に手を抜くっていうのも難しい話だけど」
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