1556人が本棚に入れています
本棚に追加
/118ページ
「……すみません」
「いや。いいんだよ。旧知の間柄っていうのもあるけど、多希くんがそういう性格なの分かってるから、声かけて引き抜いてきたんだから。俺に何か言っておきたいこととか、ある?」
多希は沈黙を置いて、久住とあったことを話した。
心を砕いてくれている三好相手でも、さすがに元恋人との話はしなかったが……。
告白をされて、丁重にお断りしても久住がまだ好きらしいことを暴露した。
「え? 逆に何で付き合わないの?」
「だ、だって、生徒と講師ですよ? 万が一他の生徒に知られでもしたら……」
「講義中にずっと手を握ったりしていちゃいちゃするわけでもないんだろ? 多希くんは心配性だな」
久住の大きな男らしい手の感触を思い出し、多希は何も言えずに赤面する。
喋りだすと喉が渇いてきて、多希も負けじとビールのお代わりを頼んだ。
「言葉の文のつもりで言ったんだけど……しないよね?」
「しませんよ! からかわないでください」
「はいはい。ごめんよ。君達二人がどこまで進んでるのか分からないから、俺もどこまでいじっていいのか迷ってるんだよ」
「な、ないですよ。進展なんて」
すでに二杯目のビールを空にした三好が、挑発的に笑った。
最初のコメントを投稿しよう!