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そして、久住との進展を勝手に賭け事にされ、多希は飲みに付き合わされた。
多希のほうが多く飲めば、今日の飲食代は全て三好の奢りだ。
色白のせいなのか、多希は酒に弱いと思われることが多い。
こういった賭けにはよく誘われるのだが、いずれも負け知らずだった。
ぐでんぐでんになった三好が六杯目を頼もうとしていたので、すでに七杯目のジョッキを傾けていた多希はさすがに止めた。
久住と二人で飲んでいたときよりも緩いペースだったので、酔いはそれほど強くない。
「多希くぅーん……なんでそんなに強いんだよおぉ……」
「学生のときはバーで働いてましたから」
「聞いてない! 卑怯!」
賭けに勝ったので、ここの支払いは三好だ。
ふらついて千鳥足になっている三好を、多希は支えて店を出た。
「タクシーに放り込んでいいですか?」
「辛辣! 家まで一緒に来てよ……帰るの怖い」
「三好さんから賭けを持ち寄ってきたのに、何言ってるんですか。俺まで奥さんと子供さんに怒られるの、嫌ですよ」
「俺もいやー!」
喚く三好を支えながら、多希は駅のロータリーを目指した。
久しぶりに飲み過ぎたので、多希も家に帰って休みたい。
十時過ぎ頃、そろそろ終電間際で人の流れは駅のほうに吸い込まれていく。
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