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「ああっ! あ、あぁ……あ、ん」
──満たされてる、気がする。
いつも空っぽだった行為が、さらに多希の心を虚しくさせていた。
今は不思議とそんな気持ちにならない。
自然と思い浮かべれば、久住の姿で頭がいっぱいになる。
久住の指がそろそろと拙い動きで、秘所を探り始める。
またも焦らされているのか、と不満が募ったのは一瞬だけで。
真剣な表情で足を広げた先を見つめられ、爪先までじんと火がついたように熱くなる。
「は、はやく、してください。我慢できなくなる……」
ことを進めようとしない久住に、多希は焦りを覚える。
──やっぱりしたくない……とか? いや、だって、久住さんのだって。
布越しでも分かる久住のそれを、もう一度……今度はちゃんと味わいたい。
早急なセックスばかりに身を置いていた多希にとって、ベッドの上での空虚な時間が一番辛い。
「あの、ですね……日頃から俺を指導してくださっている先生はご存知かと思うのですが」
「な、なんですか」
「手先が壊滅的に不器用なんです……」
久住は自分の膝に手を置いて、悪さをした犬のようにしゅんと項垂れた。
何故今になってその話を?
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