*ブーバとキキ*

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 私が幼稚園に通っていたころの話だ。  おもちゃ売場で、私は子供用の腕時計に見とれていた。心がときめく。着けてみたいなと思った。 「ねえ、これほしい」  わくわくしながら親にねだる。親はびっくりして、私から腕時計を取りあげた。 「腕時計なんて着けちゃだめでしょ!」  私は口をぽかんと開けた。 「どうして?」  私に目の高さを合せ、優しく、さとすように言う。 「腕時計はキキが着けるものでしょ。あなたはブーバなんだから」  私の頭は、はてなでいっぱいになった。 「ねえ、キキってなに? なんでわたしがブーバなの?」  だけど、親は答えてくれなかった。
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