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私が小学校に通っていたころの話だ。
私は図工室で色鉛筆を使っていた。先生が私の絵を覗き込んで言う。
「もう少し緑を使ってみたらどうですか」
私は先生の顔色をうかがった。
「なんでですか」
先生は優しく、さとすように言った。
「オレンジ色ばかり使っていたら、キキみたいでしょ。あなたはブーバなんだから、緑色を使いましょう」
「でも、私はオレンジのほうが好きで……」
「先生、かけました!」
ブーバの子が、できあがった絵を持ってくる。緑色がたくさん使われていた。先生は感心したように言った。
「ブーバらしい、立派な絵ですね。たいへんよくできました。花丸をあげましょう」
私はオレンジ色の色鉛筆を握りしめたまま、自分の絵を腕で覆い隠した。涙があふれてきて、絵がにじんでしまった。
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